Little Ease(無楽)

当図書館では、Little Easeを日本語訳するにあたって、「無楽」という言葉を使うことにしました。

これは、私の持つ書籍の中で使われていた訳です。

ほとんど直訳ですが、調べていくうちに、この拷問の効果を単刀直入に表した名前だということが分かりました。

無楽とは

無楽とは、イギリスのロンドン塔に存在した、または存在するとされる独房のことです。

より正確には、ロンドン塔の中のホワイトタワーの地下に存在したとされるようです。が、現存していないとされており、詳細な場所は分かっていません。

この独房はかなり小さく、中に入れられた犠牲者はまっすぐ立ったり、座ったり、横になることが出来なくなるなりました。

これが意味するのは、不自然で不安定な姿勢を強要されるということです。

実際にやってみれば分かることですが、例えば中腰のような安定しない姿勢を長時間続けると、体の特定の部位に過剰な力が加わります。

すぐに楽な姿勢を取れば問題はありません。しかしその状態が続けば、耐えがたい苦痛となることは簡単に想像できるでしょう。

まさに「楽」が「無」い。無楽ということです。

しかもこの独房は、三方を窓のない固い石造りの壁に覆われ、唯一の出入り口も頑丈な木の扉で出来ています。

閉じ込められた際の圧迫感は、想像を絶するものであったことでしょう。

見た目や構造に疑問がある

余談ですが、英語版Wikipediaでは無楽の大きさを、「側面が1.2メートル(3フィート11インチ)に設計されている」としています。

しかし、その情報の裏付けとなるのがおそらくこのサイトなのですが、逆にここ以外では具体的な数字を出している資料が存在しません。

そもそも1.2mも広さがあるなら、立ったり横になったりは出来ずとも座ることは出来るだろうということもあり、私はこの数字が正しいとはちょっと思えません。

このサイトで掲載している画像のいくつかはそのサイトやWikipediaからの引用なのですが、そもそもこの画像も本当に無楽の画像なのか怪しいところです。

立ったり横になるのは難しいかもしれませんが、間違いなく座れますからね。

Little Ease. Illustration from unidentified late 19th century history of England.

拷問の世界では、情報量の少なさからその拷問の正体が掴めないというのは良くある話です。

この拷問をより正確に知るためには、さらなる情報の発見を待つ必要がありそうです。

スカベンジャーの娘とコンセプトが同じ

イギリスにはスカベンジャーの娘という、無楽と同じく不自然な姿勢を強要し苦痛を与える拷問具が存在します。

あちらも単に不自然な姿勢を強要するというだけの拷問具ですが、その効果は絶大でした。

形は違いますが、同じコンセプトの拷問が使われたというところに、イギリスという国の拷問に対する姿勢が見えますね。

この拷問を受けた人物

この拷問を最初に受けたのは、ジョン・ボーデという人物であるとされています。

かれはロンドン塔の看守だったのですが、あるとき囚人である女性のアリス・タンカービルの脱獄を手伝って失敗し、拷問として無楽に4日間入れられました。

イギリスでは、この話を元ネタとしてドラマがあるそうです。

残念ながらアマゾンプライムでは見られなかったのですが、DVDはあるようなので、いずれ機会があれば観てみようと思います。

参考文献

  • 月光 LUNA No.20
  • The History of Torture in England
  • https://en.wikipedia.org/wiki/Little_Ease
  • https://www.rct.uk/collection/2102216/little-ease-torture-cell-beneath-the-white-tower
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