拷問が登場する作品は数あれど、かつてこの世界に存在した拷問具そのものが登場する作品というのはあまり多くありません。
そういう意味で、この漫画『魔女へ与える鉄槌』は数少ない拷問具が登場する作品なので貴重です。
もっとも、その扱いは拷問具というよりはむしろ武器ですが。
拷問とバトルファンタジーは相性が良いのかもしれない
この漫画のジャンルを一言で表すなら、「魔女が拷問具を使って戦いながら世界を変えようとする中世ヨーロッパ風ファンタジーバトル漫画」でしょう。
主人公は魔女で、敵も魔女で、互いが拷問具(や処刑具)を模した武器を魔法で作り出して戦う。そんな漫画です。
拷問具で戦うというコンセプトの漫画は他にもありましたね。拷問具は武器として使いやすいのでしょうか。(こちらでは拷問具が人間に変身していますが)
拷問の解説が登場する
この漫画で私が興味を抱いた点として、拷問具で戦う際、毎回その拷問具に関する情報が解説されるというのがあります。
例えば一巻の最初の方で苦悩の梨が登場するのですが、そこではこんな解説がさしこまれます。

「苦悩の梨」
ガンガンジョーカー『魔女に与える鉄鎚』より
この洋梨型をした鉄製の器具は目地を捻ることで開閉自在
この後にも解説が続くのですが、苦悩の梨を猿ぐつわとして解説しているのは非常にポイントが高いですね。
大抵、ネットではどこを見ても膣や肛門に入れる拷問具であると紹介されていますから。
この本の作者である村田真哉氏は『蝶撫の忍』や『アラクニド』、『キャタピラー』などの漫画の作者なのですが、そちらでは登場するキャラクターが昆虫を模した技で戦うという設定があります。
こちらでも、登場人物が技を使う際にその元ネタとなった昆虫の特徴や性質が解説されるのですが、『魔女に与える鉄槌』ではそれを拷問でやっているわけですね。
魔女に与える鉄槌の立ち位置が悪魔寄り
この漫画のタイトルでもある「魔女に与える鉄槌」は、この漫画の中にも本として登場します。
だいぶ思い切った独自設定が盛り付けられていましたけどね。
なんせ、この本の制作に悪魔が関わっていますから。
実際、「魔女に与える鉄槌」そのものは悪魔が書いたんじゃないかと疑いたくなるほど非現実的な内容に見えるので、説得力はありますね。
とは言え、物語全体から見ればスパイス的な位置づけと言いますか、あまり重要なアイテムという訳はないようだったのでそこは少し残念でした。内容をもっと深く掘り下げて欲しかった。
とは言え、この漫画はジャンル的にはバトル漫画ですから、「魔女に与える鉄槌」の内容を深く掘り下げてもしょうがないと言えば確かにそう。仕方のないことですね。
打ち切りのような終わり方をする
エンディングのネタバレになってしまいますが、この漫画、かなり打ち切りっぽい終わり方をします。
言ってしまえば不完全燃焼な終わり方で、読み終わったときに消化不良を感じました。
Amazonのレビューでも書かれていますが、実際に打ち切りになったのかもしれません。
とは言え、総評すると私にとっては拷問が登場するというだけで十分満足できる漫画でした。
全部で3巻しかないので、軽い気持ちで読めるのも良いですね。
拷問の資料は大抵ぶ厚い本ばかりですから、息抜きで読める拷問関係の本というのは貴重です。
個人的なおすすめポイント
全くの余談ですが、私がこの漫画で一番お勧めするキャラは法王です。
キャラが良い。思想がかわいい。

法王を主人公にして、宗教と教会の内部構造を解説する漫画とか書いて欲しい。
色々と書きましたが、拷問を題材とした漫画というのはそれだけでも我々の業界では貴重です。
拷問を調べる際の息抜きにどうぞ。