車輪の拷問、野ウサギ責め

その性質上、拷問具の中には処刑具と混同されているものが非常に多いです。

実際に処刑具としても使われていた拷問具が多く存在するというのも、ややこしさに拍車をかけているのでしょう。例えば、ガロットとか。

拷問具を調べている私としては、とても残念な思いです。

そんな勘違いされやすい拷問具ですが、その中でも今回紹介する野ウサギ責め(rabbit spike)は、特に勘違いされている拷問具の1つだと思います。

どれくらい勘違いされているのかというと、海外で車輪刑と混同されすぎているせいで、調べても英語での名前が出てこないほどです。どうやら車輪刑の1形態だと思われているようなんですね。

なので、このサイトでは野ウサギ責めのことをrabbit spikeと呼ぶことにします。私が命名しました。

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車輪を使った拷問

野ウサギ責めとは、車輪に犠牲者を縛りつけて、車輪ごと犠牲者を回転させる拷問です。

これだけでは単に目を回るだけで大した苦痛になりませんが、車輪の下には鋭い棘の生えた台が置かれているので、犠牲者は回される度に棘に刺されることになります。

その結果、皮膚が細かく傷つけられ、まるで皮をはがれた野ウサギのような見た目になるというのがこの拷問の名前の由来のようです。

車輪の下には、棘の付いた台の他に、火を焚くこともありました。その場合は犠牲者の体に油を塗って苦痛を増加させることもあります。同じ火を焚く場合でも、煙を使って犠牲者を苦しめる方法もありました。

似たような拷問に、車輪の下が水場になっているものがありますが、こちらは水車責めと言ってまた別物です。

古代ローマから中世ヨーロッパまで

この拷問が最初に歴史に登場するのは、おそらく紀元前の古代ローマです。

古代ローマの聖人、聖ゲオルギオス(聖ジョージとも言われる)が棘付きの車輪で拷問されたという記録がありました。

彼はキリスト教の聖人伝説をまとめた『黄金伝説』という本にドラゴン退治の逸話が書かれている聖人の一人なのですが、同じ本の中で彼が拷問によって改宗を迫られる話があります。その拷問の中に、車輪と刃による責めの記述が見られます。

また、この記述を元に描かれた絵が、ハーダムの聖ボトルフ教会に存在します。いつか見に行ってみたいですね。

(リンク元: http://izmreise.la.coocan.jp/England/25St_Botolphs_Hardham/hardham.html)

経年劣化で消えかかっていますが、確かに車輪が見えます。さらによく見ると、車輪に人がくくりつけられているのも見えます。おそらく聖ゲオルギオスでしょう。

また、16世紀の画家、ミシェル・コクシーの作品「責め苦を受ける聖ゲオルギウス」にも同じく野ウサギ責めの拷問が描かれています。

聖ボトルフ協会の絵とは形が少し違いますが、どちらも車輪と棘を使っているという特徴は捉えていますね。

ちなみに、彼はこれ以外にも鞭打ちや融けた鉛をかけるといった拷問も受けますが、キリスト教を捨てることは無かったようです。だからこそ聖人として扱われているわけですけどね。

時代が進み、中世ではドイツを中心とした西ヨーロッパで利用されました。この時代のヨーロッパで使われたということは、異端審問で使われたということですね。

当時のこの拷問を知る手段として、地中海に浮かぶキプロス共和国キレニア城に展示されているものを見に行く方法があります。ここでは、中世の拷問を蝋人形で再現しているのですが、その中に野ウサギ責めがあります。

(リンク元: https://4travel.jp/travelogue/11314880)

私はこの画像を見たとき、想像していたより車輪が小さいという印象を受けました。

これでは回転させるまでもなく、放置されているだけでも背中が反って苦しいでしょうね。

それにそもそも、回転させることは出来るのでしょうか? 下の部分が狭すぎて、犠牲者の体が通れないように見えます。

しかし逆に、こんな狭い場所に無理やり体を通させられるなら、それは確かに拷問でしょう。

真実の車輪

少し形が異なりますが、似たような拷問具がスペインの異端審問でも使われました。

こちらは真実の車輪(Rueda de la Verdad )と呼ばれており、野ウサギ責めから派生した拷問具だと考えられます。

画像のものは回転する部分が車輪ではなく樽のような形をしており、中に犠牲者を入れて回転させます。ちなみに、樽の内部には棘が敷き詰められています。

樽が回転すると、犠牲者は遠心力で樽に張り付くことになりますが、同時に棘が刺さるという仕組みです。自分の体重に遠心力が加わることでより強く棘が食い込むというのは、さぞかし苦痛だったことでしょう。

また、この拷問では下で火を焚いて熱により責めることもあった……と、説明されている記述を見つけました。しかし、見たところこの拷問具は木製ですから、本当に火を使えたかどうかは疑問です。燃えたら拷問になりませんからね。

もしかしたら、鉄製の真実の車輪が存在するのかもしれません。
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