あらかじめ言っておきますが、この記事には映画『ジェーンドウの解剖』のネタバレが大量にあります。
といいつつ、話のあらすじや結末をしっかり語るつもりもありません。
映画を見た人向けに、映画の中にあった要素について、考察したり語ったりしたいという趣旨の記事です。
ちなみに、要素というのはもちろん拷問のことです。
もしも今後、この映画を見る予定があるなら、記事を見る前に視聴を済ますことを強くおすすめします。
ちなみに、ステマみたいであれですが、アマゾンプライム会員なら無料で見れますよ。
私もこれで見ました。
※以下ネタバレを含む
死体として現れた魔女の素性について

映画の中盤辺りで明らかになりましたが、あの死体は魔女、しかもかの悪名高いセイラムの魔女狩りで処刑された魔女であるということでした。
この図書館に訪れる人間なら知っているでしょうが、セイラムの魔女狩りはアメリカで行われた魔女狩りのことです。
新大陸で行われた魔女狩りであり、かつ17世紀というかなり新しい時代に行われた魔女狩りであるということで、魔女狩り界隈でも大きな話題になる魔女狩りの1つです。
映画内でも、それを匂わせる伏線はいくつかありましたね。
- 口から出てきた北の地域で咲いている白い花
- 数百年前の風習であるコルセットを着ていた体格
- 腹から出てきた、歯を包んでいたレビ記の章と節が書かれた布
- そしてなにより、腹の中側にあった魔法陣的な何か
特に、レビ記の部分はわかる人には一発でわかるヒントだったのではないでしょうか。
男または女で、口寄せ、または占いをする者は、必ず殺されなければならない。すなわち、石で撃ち殺さなければならない。その血は彼らに帰するであろう
レビ記 20:27 (Japanese Bible)より引用
ちなみに、このレビ記の記述は魔女のことを示しているわけではありません。
レビ記の書かれた当時、まだ魔女狩りの頃に出現した魔女というイメージは存在しませんからね。
後世の人間が魔女とレビ記の記述を結びつけ、魔女を処刑することの根拠としたというのが現実です。
つまり、処刑のための後付けの根拠ですね。
もっとも、セイラムの魔女狩りでもこの後付けの根拠を元にして魔女を処刑したわけなので、何ら矛盾はしていませんが。
もちろん、現実のセイラムの魔女裁判で処刑されたのはすべて人間でしょう。
が、もしもその中に本物の魔女がいたら……というのがこの映画です。
面白い着眼点だと思いますね。
魔女は拷問されたのか

この映画の背景を考えると、実際の魔女が、魔女狩りにあって処刑されたということになります。
そして死んではいないが行動不能になった魔女が現代に発見されて……と、ストーリーは続くわけですが。
この魔女、どんな拷問を受けたんでしょうね?
皮膚の傷は治ってしまうようですが、体内の傷は治らないと映画の中では表現されていました。
そこから推測される魔女に与えられた傷は、
- 手足の骨折
- 複数の内蔵の切り傷
- 女性器の切り傷
- 肺の火傷
これらだと分かります。
手足の骨折は縛られたときに出来たものだろうということなので、拷問とは無関係としまして。
では、他の傷はどのようにして付けられたのでしょう。
内蔵の傷は拷問でつけられた?
仮に魔女狩りで魔女だと認定された場合、被告が迎える結末は
- 生きたまま火炙りになる
- あらかじめ絞首刑になったあと火炙りになる
このどちらかです。
このとき、体に切り傷が、しかも内臓に達するほどの切り傷が生まれることはないはず。
となると、これらの傷は拷問で付けられたものだということになるのでしょう。
しかし、傷の中には心臓に達しているものもあったわけですし、拷問として行なったにしてはあまりに危険、というより稚拙に感じます。
なんせ、拷問では殺しては意味がないのですから。
とはいえ、考えてみればセイラムの魔女狩りはそもそも集団ヒステリーの結果起こったようなものですし、拷問もずさんになっていた可能性は否定できないんですよね。
案外、内蔵の傷は拷問中についたもので、これが原因で死なせてしまったというのが真実に近いのかもしれません。
女性器の切り傷は?
映画内でははっきりと描写されていませんでしたが、検視官の父親が死体の女性器内を調べるシーンがありました。
それによると、内部は切り傷だらけだったとのこと。
これは間違いなく拷問でつけられたものですね。
魔女狩りで女性器に対する拷問となれば、おそらく魔女の楔でしょう。
これは魔女狩り版ユダのゆりかごとでも言うべきもので、説明は画像を見たほうが早いと思います。

正直、これが拷問なのか処刑なのかは議論の余地があるところですが、これが使われたという設定なのは間違いないでしょう。
肺の火傷は?
肺が真っ黒に焦げていたということから、検視官の息子の方は最初、この魔女の死因を焼死だと判断しました。
その直後に父親が気道が焼けていないことを指摘して間違いだと気づくわけですが、これは私にとって注目するべき描写でした。
というのも、上で書いたとおり、魔女の運命は焼かれて死ぬか死んでから焼かれるかのどちらかしか無いからです。
そしてこの魔女は死んでから焼かれた。
ということは、この魔女は自身が魔女であることを認めてから死んだのではないか、と考えられるからです。
……と、言いたいところですが、これはあくまでも正式な手順の場合の話。
拷問中に犠牲者が死んだ場合は、当然どちらでもなくなります。
そして上でも書いたように、この魔女は内臓に傷がありました。
ということは、拷問中に誤って死なせてしまったが、無理やり魔女認定して火炙りにしたというストーリーが考えられます。
ちなみに、火で燃やされていたという時点で魔女として扱われたことは確定です。
当時のアメリカは土葬文化であり、人間を仮想することはなかったはずだからです。
よくあるジョークで、死ぬほど厳しい拷問にかけておいて、
- 死ななければ魔女だから処刑する
- 死んだら魔女じゃなかったことが分かってよかった
となり、どっちにしろOK!(全然OKではない)というのがありますが、この映画では死んだのに魔女認定しているということですから、なかなか救いのない話だということになりますね。
もちろんこれは私の想像であり、実際のところどうなのかはわかりません。
しかし、映画のストーリーと見比べても矛盾はないように思えます。
……え
肺が黒焦げなら、他の臓器も黒焦げなければおかしい?
…………描写上の都合だと思います。(矛盾)
特に意識せず見ていた映画で魔女狩りの話が出てきて、テンションが上がりました

全く個人的な話なのですが、私はホラー映画が好きでよく見ます。
この『ジェーン・ドウの解剖』もその一環として視聴した映画で、魔女や拷問の話が出てくるとは全く思っていませんでした。
自分が専門としている内容が不意打ちで登場するというのは、嬉しいものなのですね。
また、こんな経験ができれば良いと思います。