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異端審問は恐ろしいものだという認識は、ペルーの異端審問を知ると変わるかもしれません

異端審問といえば、恐怖の象徴みたいな印象があると思います。

しかし、そうでないのもあったと『ペルーの異端審問』では書かれています。

注意:ノンフィクションです

この本は、ペルーで実際に行われた異端審問について書かれた本です。
実際に行われた異端審問の記録をもとにして書かれたものであり、想像で書かれたフィクションではありません。

なぜ最初にわざわざこんな注釈をするのかというと、この本の内容はフィクションのように見えるからです。

いやむしろ、妄想で書かれたものだとすら思えるかもしれません。

当時の異端審問が、現代日本の価値観から見ると異常なものだからです。

なので、全く予備知識のない状態でこの本を読むと、リアルじゃないと思ってしまうかもしれません。
逆に言えば、異端審問のリアルな世界に触れるには良い本だと言えるでしょう。

拷問に耐えて狂人と認定された男の話

このサイトがこの本を取り上げるということは、拷問の話題があるということです。
そもそも異端審問について書かれた本ですから、その中で拷問が行われているのは当然のことではありますが。

といっても、具体的な拷問の方法やその描写などはありませんでした。

単に「拷問が行われた」とだけしか書かれていませんでしたからね。しかしそれでも、非常に興味深い内容でした。
しかしそれでも、非常に興味深い内容でした。

9章:不道徳な夢想家

拷問の下りが出てくるのは9章の「不道徳な夢想家」という部分なのですが、その中でフアンという男が異端審問を受けることになります。

その理由というのが面白い。

このフアンという男は、「自分は国王の子供であり、王位継承権がある」と主張し、それが審問官の目に止まったことから異端審問がスタートします。

ここで注目したいのは、フアンが異端審問を受ける理由が「王位継承権を主張したから」ではなく、「彼が主張する国王が行ったとされる性行為が、キリスト教の教義に反していたから」だということです。

具体的にどう反するのかと言うと、フアンの主張はこうです。

「生殖力の強い精子ならば、女性が近づいただけで毛穴から吸収され妊娠する」

ちなみに、男女ともに特の高い人間同士のほうが成功率は高いのだとか。

そんなわけあるか! とツッコみたくなるとことですが、それは当時の審問官たちにとっても同じだったらしく、この主張を撤回させるべく拷問が行われました。

この拷問は数カ月続きますが、結局フアンは主張を撤回せず、審問官は「この男は頭のおかしい狂人だ」と認定して釈放しました。

異端審問と拷問の関係がよくわかるエピソードだと思います

意外に思うかもしれませんが、拷問は死ぬまで続くわけではありません。

異端審問における拷問は、あくまでも「真実であるキリスト教の教義」に反する思考を持つ人間を、正しい方向に導くための行為です。

なので、相手がキリスト教徒ならば、死なせてしまっては意味がありません。

異端審問で使われた拷問具が、苦痛を与えつつ、しかし死なせないように工夫が凝らされている理由がここにあります。

もっとも、この話の審問官は別に殺しても構わないという姿勢で拷問を行っていたようでうすが……

全くの余談ですが、フアンは自分の主張の正当性を認めさせるため、父親と一緒に寝ていた娘がなぜか妊娠したという話を持ち出していました。

このように、性行為を行わなくとも妊娠するとこが実際にある、と。

ぶっちゃけ、こっちの話のほうが問題なような気がしますが、話の中では特に問題になっていませんでした。

リマ、底の見えない深い街だと思います。

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